あるアメリカ婦人との出会い
(平成21年)

足羽 雄郎

「アメリカ人の中にも貴女の御主人の様に往年の宿敵日本兵のことをそんなに高く評価していた人がいたという事を伺って、実に感激です」と私が礼を述べると、彼女は更に語を続けて

「話は変わりますが日米戦の頃の日本の家庭では躾がとても厳しく、又学校においては、生徒は心身ともにスパルタ式に訓練されたものだと聞いています。私はこれが強い日本男子を育てたのだと思います。
今日の日本のどこを見ても、あのニューギニアの戦線でアメリカ兵を散々悩ませた強い日本兵の後継者は見当たらないではないですか。厳しい親、厳しい教師という語すら、日本ではあまり聞かれなくなったと聞いています。
私がアメリカ人として申すのもどうかと思われますが、やはりマッカーサーが押し付けた憲法が間違っていたようです。日本の文化伝統を完全に否定しているこの憲法を未だに有難がっているようでは、日本の将来は地獄です。
私が何よりも心配なのは、このままだと日本人が日本人でなくなってしまうことです。たしかに、アメリカ政府当局者の狙いは、日本が二度とアメリカに立ち向かうことのないように、日本から牙を抜くことにあったことは確かでしょう。もしそうだったとしたなら、アメリカは完全、いやそれ以上に大成功したことになりますが、皮肉なことに、アメリカが余りにも成功したために、今日では、日本はアメリカの同盟国としては、少なくとも軍事面では、もっとも頼りない存在となってしまいました。
それはそれとして、やはり日本男子は強くなくては駄目です。アメリカ人が尊敬するのは強者のみです。私は一外国人として、一日も早く、日本が昔の栄光を取り戻してほしいと願っています」

と言い残して彼女は私と別れた。

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