敵の人命さえ助けた日本軍
(平成20年)
日本ペンクラブ作家、海交会名誉顧問
三好 誠
日本軍が相手の輸送船を主目標としたことはありません。
ここに一つの挿話を記して、限りなき哀惜の念を込めて、日本海軍と船舶犠牲者の手向けと致します。
昭和16年(1941)12月10日、マレー沖海戦。
イギリス東洋艦隊旗艦プリンス・オブ・ウェールズは巡洋戦艦レパルスを伴い、駆逐艦三隻を従えてマレー沖で日本軍機に捕捉された。
海軍航空隊の第六次攻撃はこれに止めを刺さず、残存の駆逐艦三隻を見逃して溺者救助に当らせた。爆弾は域外に捨て旋回して帰還、翌日はその海域に慰霊の花束を投じています。
敵二艦の壮烈な戦いによる死者は840人、救助された者2081人であった。
駆逐艦の艦長は
「我々は攻撃を一切受けなかった。救助の妨害も受けなかった。敵の攻撃機は我艦の上を航過しなかった」
と証言した。
この日本軍の気高い行動を表して、ピュリッツア作家ジョン・トーランドは
「日本軍は情けを掛けるのは良いが、その連中は明日にも命を狙って来ることを忘れてはならない」
と警告しているほどです。