西村氏の対応で思ったこと

(令和2年)

大村 万集

議論に礼儀は大事だと改めて思いました。
何の話かと言えば、今人気の吉村大阪府知事に噛みついた西村経済再生担当相の事です。

政府の緊急事態宣言があって、自粛要請をしている訳ですから、緊急事態が延長になって、解除基準も示さない国に対して多くの国民が不満や不安を持っているところに吉村知事が自粛解除の基準を発表したのは実に的を得た行為です(「もっと良い基準があればそちらに乗り換える」という柔軟な姿勢も良いです)。

それに対して西村氏は思いっきり上から目線で「勘違いをしているのではないか? 強い違和感を感じる」とやったものですから方々で叩かれています。

法律的には西村氏の方が正しいのでしょう。しかし、システム構造から考えれば吉村氏の行動は誰から見ても理にかなってると感じます。

人を叩く時にはいくつかの条件があります。特に上の立場の人程、そこを見誤って無礼な対応をすると大衆の反発を招きます。そこが分からないところに西村氏は政治家としては致命的とも言える感覚の欠如があると感じました(その西村氏に謝罪した吉村氏は計算しすぎている感じでちょっとあざといと思いましたが(笑))。
西村氏は「自治体に先駆けて国が緊急事態解除の基準をいち早く示さなければならないのに、遅れてしまって申し訳ない」と謙虚に言えば目的は果たせたしポイントアップだったのに残念でした。

将来の総理候補らしいですが、随分と株を下げてしまったようです。まあ、早いうちに馬脚を出していただいてこれはこれで良かったかと。

今、安倍氏は慌てて解除基準の策定に動いているようです。ある意味西村氏の言動が話題になったことは効果があったと言えます。

ですが、このいきあたりばったりの体質。実に日本的で大いに問題です。

私は大東亜戦争が思想的、歴史的観点から聖戦だった事に微塵も疑いを持ちませんが、戦術面では正に行き当たりばったりの最低の戦争だったと思います。A級戦犯、賀屋 興宣の「共同謀議と言うなど恥ずかしいくらいにみんなばらばらだった」という証言が全てです。今回のコロナ対応も大差ありません。

日本国民は大東亜戦争をもっと研究しなければいけません。今度同じシチュエーションに出会ったら必ず勝つという意気込みを持つべきです。
何故かと言えば、国際法上、大東亜戦争は終結していますが(細かく言えば中露とは終結してませんが、それは置いておいて)、広い意味で大東亜戦争はまだ継続しているからです。石原莞爾の唱えた世界最終戦争が形を変えて継続しているというのが多分正しいのです。アメリカは間違いなく今なおそういう認識で日本と対峙しています。

日本は敗戦後、東西冷戦の時局に乗り上昇機運となりましたが、それはアメリカが望んだものではありませんでした。経済で一時アメリカを追い詰める程となった私たちが何故今極端なデフレ経済で苦しんでいるのか? その大きな要因の一つがアメリカが大東亜戦争当時と同じ意識で私たちを見ているのに、私たちがそうでないということにあります。

従って今日の我々の窮状の原因を知る事と、その解決策を考える上で大東亜戦争に至る経緯とその後を考察する事は極めて重要なのです。

そして、その歴史をどのような姿勢で研究すべきかというのがまた重要なのですが、残念ながら浅学な私は日本の中にその好例を示す事が出来ません。

敵側にこそ学ぶべきところがあるというのが今思うところです。

一つはアメリカです。彼らは大東亜戦争の30年以上前から日本との戦いを研究していました。その姿勢は敵ながらあっぱれです。もうほとんどストーカー気質というか、先見の明ありすぎというか。

もう一つはイギリスです。
最近の話ですが、イラク戦争が正当な戦いだったかをイギリスはブラウン首相の時代に2009年から2年間14億円をかけて検証しています。そしてイラク戦争は間違った選択であったと結論します。特筆すべきはブラウン首相がイラク戦争当時のブレア首相と同じ労働党ということです。

日本に例えるなら安倍晋三が小泉純一郎の判断を断罪するようなものです。安倍晋三が菅直人を断罪するなら何のためらいもないでしょうが、小泉に公然と異を唱えられるか? 絶対無理です。さらに、それが国民も想像すら出来ないところが日本という国の最高にダメなところです。
イギリスなどかつての黄金期から比べてすっかり落ちぶれてしまった国ですが、この点は日本が大いに見習うべき素晴らしい態度だと思います。

山本太郎に「イラク戦争は正しかったのか?」と国会で問われて答弁を逃げた安倍晋三は本当に情けない。真の政治家であるならば「その質問を待ってました」とばかりに反論すべきなのです。私が安倍晋三ならそうします。これは政治家として歴史に残るかもしれないくらいの最高の見せ場だというのに。まあ、安倍氏がそうできない理由も良く分かっていますが。

日本人が上記のアメリカやイギリスに見られるような超長期的、あるいは客観的な視点で大東亜戦争を冷静に分析することが今の私たち、のみならず世界を救うことにつながるものと私は確信します。

大東亜戦争から学ぶべき最大の教訓は「平時から戦乱を想定した準備をすること」でしょう。しかし、西村大臣の発言から現政権のメンバーが過去から全く何も学んでいない事(3.11からすらも)が良く分かりました。雰囲気だけで緊急事態宣言をし(ある意味これは仕方無いとしても)、その後具体的な出口戦略を全く考えていないこの状況は国家消滅の危機を迎えた大東亜戦争の混迷の終局過程と酷似しています。大東亜戦争では幸いにも昭和天皇の御聖断のおかげで最後の最後で日本の消滅を回避出来ました。

今回のコロナ感染は我が国も何となくピークを越えました。詰めを誤らなければ夏までに終息出来るチャンスが出てきました。80年前と違い、今上陛下のお手を煩わせるような事態とはならないでしょう。しかし、このような何も学んでいない政府が我々の命運を握っている事を知るにつけ穏やかな気持ちでもいられません。

件の西村氏はもちろん話になりませんが、しかし、安倍氏が具体的解除基準の策定に乗り出しているという情報が本当なら、変なプライドに左右されず、自分の足りないところに気付いて実務的に動こうという意思を示しているということであり、いくらか救われた気持ちになります(なお昭和天皇と安倍氏は比較の対象にすらなりませんので誤解されませぬよう)。

などなど西村氏のおかげでいろいろ考えさせていただきました。

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