「プリンス近衛殺人事件」を読んで
(平成19年)
文芸評論家
蓮坊 公爾
著者・アルハンゲリンスキーは、元タキケント市長であり、イズベスチャ紙副編集長というれっきとしたロシア人である。
本書の要点をかいつまんで述べる。
◆ 近衛文隆陸軍中尉は、朝鮮国境付近で逮捕され、赤軍防諜本部スメルシ連行。国家保安省による拷問、数十か所に及ぶ強制収容所への移動。ロシア連邦保安局の証拠捏造、スパイ強要に対し[日本人としての誇り]ゆえ拒否。自殺の許可を求めるが、「赤いサル・日本人」を拷問する楽しみから却下される。なんと11年間の監禁、拷問。
嘆願が叶い帰国許可となったが、その間近に急死。毒殺が有力と、著者は言う。
◆ 自主的に武装解除した「関東軍」の高級指揮官のほぼ全員、170名の将校が拉致され、そのうちの22%が死亡。
日本人捕虜―100万人―。
このうち、なんと30万の同胞が、シベリアの寒気、拷問、過酷な労働により亡くなってしまった。
つまり、瓦解した関東軍そのものが、ロシアの国家再建の労働者としての足であり、家畜ごとき生活を強いられていたのである。
この数字は、我国においては、過少に報道され、真実が伝わっていない。否、左翼マスコミ人の意図的反日も災いしている。
◆ 瀬島龍三なる関東軍の参謀がいた。アルハンゲリンスキーはいう。
「この男は、ロシアに媚び、感激のあまり80歳にて感謝状まで贈っている」と。
この男の売国的素行には、中田清康・日本をまもる会会長も雑誌などで批判しておられた。こうした親ロシア・ロビィストは、他にも数多くいる。その1人、私の知る司法大臣・風見章はマルキストであり、戦後、左派社会党の国会議員であった。
◆ 著者が指摘している。
「日本は手薄(対ドイツ戦で手一杯)になったソ連を襲わなかった。4年間、日ソ中立条約を忠実に守ったのだ。」
信義を重んじる日本帝国は、条約批准を守り抜いた。が、ロシアはそうではない。
条約は、破るために相手を煙に巻くためにのみ存在している。ゆえに、条約違反「8月9日」突然の満洲侵略、略奪、暴行の限りを尽くした。こうした暴挙を手本にしているのが、北朝鮮である。
反共主義者のチャーチル・イギリス首相は
「レーニン・スターリンは全世界を数千万人の流血で染めた」と。
◆ 本書は、「1998年10月、20世紀も終りに近づき、対日平和条約締結が話題となっているという時、あろうことかロシア国会は対日戦勝記念日を復活したのである」と書く。
なにをか言わんやである。これが、ロシアの偏狭ナショナリズムである。勝手に条約を破棄、1週間の戦いで武装解除した軍隊もどきに、どの面下げて戦勝なんぞと吠えるのか。日露戦争に破れた当てつけ以外の何者でもない。
作家の半藤一利などは、日本の海軍はよかったが、陸軍はどうも・・・だって。当時を知りもせぬ奴によるその手の虚構の論は、よく耳にする。五味川純平の「ノモンハン」では、装備、作戦ともに劣る関東軍ゆえに、当然の結果の敗戦だと。だが、最近の調査によれば、「関東軍敗れたり」ではない。